あなたは何歳まで、どのように働きますか?

今年の4月に高年齢者雇用安定法の改正が予定されています。

今までも65歳まで雇用確保することは義務化されていました。

これからは70歳までの就業機会を確保する「努力」を企業側は求められることになります。

働く私たちにとって、何がどう変わる

現在、企業に義務付けている高年齢者雇用に対する雇用の考え方としては、65歳時点までは希望者全員に確実な雇用の確保をすることです。

その義務を果たすべく企業が選択する方法は3つ。

①定年そのものを無くす

②定年自体を65歳以上に引き上げる

③希望者全員に対して65歳まで働ける継続雇用制度を整備する。

多くの企業は③の方法を用いている様です。

改正後は、これらの方法の年齢規定を最低70歳まで延長する、または継続的な業務委託を締結する、もしくは雇用する企業が主体となる社会貢献事業に従事させるなど、企業側は新たな努力を求められます。

法律改正の背景の1つは2000年代に入り顕著化した生産年齢人口(15~64歳)の減少による労働力不足。

もう1つは日本の公的年金制度が現役世代から徴収した公的保険料を老齢世代の年金として支給する「賦課方式」を採用するため、全人口に占める65歳以上人口が増え続ける状況下では年金財政の改善は見込めません。

そのため近い将来において、年金支給年齢をさらに後退させるという考え方も出てきているためです。

つまり若くて元気な働き手はどんどん減っていく、それと並行して高年齢者に払うべき年金の財源も不足する、ならば高年齢者に今まで以上に長く働いてもらえれば両方一度に改善するのではないか、という考え方です。

「定年」という考え方は無くなっていく

日本において退職年齢を一律に定義する「定年」と言う考えは1887年ごろに出てきたそうで、当時の規定で定年は55歳だったそうです。

ちなみに1900年前後の日本人の平均寿命は50歳前後。

そのため当時の定年に対する捉え方は、労働力を確保したい企業に対して雇い続けられる最長期間としてここまでと言う考え方で設定されていたようで、現代の定年から連想する全員一律の強制退職という捉え方とは異なっていたようです。

戦後に整備された労働に関する様々な法律や制度により確立された一般的なサラリーマン人生の考え方は、人生の途中に設定されている「定年」まで頑張って働き、定年までたどり着けた後はのんびり隠居するというイメージです。

私たち親の世代は実際に体現していたため、私たちも当たり前と考えていたかもしれませんが、それはここ100年以内の限られた時代の出来事となるかもしれません。

今後も定年と規定する年齢が上がり続け、最終的には定年制そのものの廃止が進むことも想像でき、明治時代やそれ以前のように「働けるところまで働く」という、まさに生涯現役のような方向に進むことも予想されます。

過去の日本人が実践していたような「一生働く」と言う方向に戻る社会に合わせるためには、70・80代になっても継続できるような職種や技能を身に付けておくことも必要ですし、それを評価してくれるような企業に所属し続けることも重要です。

そのためには働き続けるためのモチベーションをそれぞれが見出す必要もあるでしょうし、収入を継続して得られるチャンスを確保するために50代や60代であっても、先を見据えた積極的な転職に取り組むというような行動面の変化も必要です。

私たちの個々の考え方も変わり、社会全体のあり方はより大きく変化していくかもしれません。

雇用・年金・資産運用、時代が求める総合的な視点

それぞれが定年を迎えスパッと仕事を辞め、そのあとの老後を十分に楽しむ。

手厚い企業年金やまとまった退職金、そして何もしなくても一定以上の金利で安定的に増やせ続けた預貯金などの蓄財、それらいくつもの好材料が重なり、結果的に定年を迎える時点で十分と思える以上の資産を準備できた人については、今までと同じように定年を迎えても全く問題はありません。

しかし、現役中の収入は伸びにくく退職金も減っていく傾向に対し、負担すべき社会維持コストは増えていく状況のなか、今までと同じように普通に働きながら定年を迎えたり、子育てしながら普通に蓄財に励むだけでは、この先何年続くか分からない老後用の資産を十分に用意できたと思える人はかなり限られる状況となってきていると感じます。

少しでも安心感をあげるためには、単純に長い期間働き続けることと合わせて、公的年金制度など既にある社会保障制度の特徴を生かして、生き抜くためにより戦略的な視点が求められます。

例えば日本の老齢年金の制度は、年金の受給開始を65歳以降に遅らせることで、年金額を増やせる「繰下げ」という方法があり、1か月遅らせるごとに毎月の受給額が0.7%づつ増加します。そして最長70歳まで繰り下げる事ができれば、毎月受取る年金額は65歳で受給開始するよりも1.42倍に増やすことも可能です。

定年の年齢引き上げにより予想される企業側の変化を利用し、無理なく年金受給をより後に遅らせる状況を自ら作り出せれば、人生の最終盤の本当に稼ぐ力が消失してしまう頃に、より大きな生活の糧を確保できるようになるかもしれません。

そのためには一定水準以上の収入レベルを維持することも大切ですが、継続して働いても良いと思える職種や仕事に就き、モチベーションを維持する事は今まで以上に重要となるでしょう。

今回の法令改正を単に定年が延長されたと捉えてしまうと、誰かが自分の仕事の終わり時を決めてくれると言う制度主体の受け身の考え方が継続し、十分な稼ぎを維持することは難しくなるだけでなく、長く働く意欲も湧かず働き続けること自体が苦痛となる。

年金を受け取れる年齢になったからと言って、それまで積み上げた年金額を決められた年齢で、そのまま受け取っているだけでは今と同じレベルの生活は維持できない。

資産形成に投資運用を加えることは、親世代が得ていた高金利と同じ様な恩恵をもたらす可能性のある手段ではあるが、「絶対にこうなる」と保障されている訳ではない。

それぞれが持っているツールや有効な方法を1つ1つを単体で使っていても、どんどん厳しくなる社会情勢下で満足な成果は得られません。

継続して働きたいと思える有意義な働き方を見つけ、年金による助けもうまく活用し、その上で資産運用の有効性を最大化していく。

個々人で使えるものや条件は違うためそれぞれで洗い出し、使いこなせるよう総合的な視点で組み合わる。そしてより良いと思える人生を最後まで生き抜いてこそ「生涯現役」といえるのではないでしょうか。

今年改正される定年に関する制度変更を、働く期間や辞める時期を自分たちが決められる時代が来たと捉える。

そして「働く」と言う人生の大部分を占める当たり前にやっていることを通して、自分らしい人生とは何かと改めて考える機会にして頂きたいと思います。

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