2月19日の日経新聞に”大手生命保険会社の3社が先進医療特約の保険料引き下げ!”という記事が出ていました。今回の保険料引き下げは先進医療保険の給付事例の約7割を占めていた「白内障の手術」が、一部を除いて昨年4月から公的保険適用になったことが要因とのことです。数年前には、下肢静脈瘤(足の血管が浮き出てしまう)の手術が先進医療から除外された記憶がありますが、今回の白内障の手術が除外された事のインパクトはかなり大きいと思います。
先進医療とは
厚生労働大臣が定める高度な医療技術で、安全性や効果が確認されると、健康保険の適用が検討される治療法です。特定の大学病院や医療センターなどの大規模な医療機関で研究・開発されています。先進医療を実施している医療機関は厚生労働省のホームページで公開されています。尚、先進医療と勘違いされやすい自由診療というものがありますが、自由診療とは厚生労働省が承認していない治療や薬を使用する方法(海外で高い効果の出ている新しい抗がん剤等)のことです。
先進医療は81種類
厚生労働省は令和3年3月時点で81種類を先進医療として定めています。(先進医療Aが23種類、先進医療Bが58種類)先進医療Aは未承認等の医薬品や医療機器の使用を伴わない医療技術のことで、先進医療Bは未承認等の医薬品や医療機器を伴う医療技術のことです。
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/sensiniryo/kikan03.html
※厚生労働省ホームページ
先進医療の数は一定ではない
冒頭に述べた下肢静脈瘤や白内障のように先進医療の技術は有効性や安全性が確認出来て公的医療保険の適用になるものがあります。また先進医療から取り下げられる医療技術もあったり、同じ医療技術でも部位によって外されるという事もあります。さらなる医療技術の進歩により医療技術が新たに出てきて先進医療に加わることもあります。そのため先進医療の医療技術数は一定ではありません。
先進医療の費用は?
現在、先進医療に定められている医療技術の中に、高額なものとしてがん治療の一つとなる「重粒子線治療」があります。重粒子線治療とは、炭素イオン線でがん病巣をピンポイントで狙いうちし、がん病巣にダメージを十分与えながら、正常細胞の有害事象を最小限に抑えることが可能とされる最先端の放射線療法です。金額は全額自己負担で約300万円かかります。
一例として
《治療が先進医療のみの場合》
全額自己負担
《先進医療と保険治療が混在した場合》
一か月の医療費が300万円かかったとして、うち200万円が先進医療、100万円が保険診療だった場合※70歳未満で基礎控除後の総所得金額が210万円以上で600万円以下の世帯の場合
高額療養費自己負担限度額…80,100円+(保険給付分-267,000円)×1%
※保険給付分=1か月の医療費300万円-先進医療費200万円=100万円
80,100円+(100万円-267,000円)×1%=87,430円
先進医療に87,430円を足した約209万円が実際に負担する費用になります。
先進医療特約で自己負担分を補う
先進医療の保障は医療保険やがん保険の特約として付加出来ます。
医療保険の先進医療特約は、病気やケガで先進医療を受けた時に保障されますが、がん保険の先進医療特約はがんの治療を目的にした先進医療に限りますので注意が必要です。
また保険会社によって給付される限度額も異なるようです。ご自身が加入している先進医療特約の保障内容を今一度確認してみてください。
仮に上記に例として挙げた先進医療にかかった200万円が保障されるというのであれば、今後保険適用になる可能性はもちろんありますが、月々100円前後の保険料(医療保険やがん保険に加入されている方)で、技術料相当額が給付される先進医療特約は、私は付けておいた方が良い特約の一つだと思っています。
代替案がある特約もあるのでは
保険には先進医療特約以外にも様々な特約が存在します。
多くの保険会社が医療保険の特約としてラインアップしている中に女性疾病特約というものがあります。女性疾病特約とは保険会社が定める女性特有の病気になった時は入院日額がプラスで給付されたり、手術給付金がプラスで給付されるという形がスタンダードです。
例えば入院日額5,000円の場合で10日間入院した場合、通常の入院で50,000円と女性疾病特約でプラス50,000円、併せて100,000円を給付されます。プラスで50,000円が給付されるので、確かにありがたいとは思います。しかしながら女性疾病特約の保険料は、先進医療特約のような安価ではないことが多いです。
保険は万が一の時に手持ちの資産では賄えないようなケースに備えるという考えもあります。例えば自動車事故や火災などは場合によっては数千万円、場合にっては億単位のお金が必要になるため、保険に転嫁する必要ありという判断が出来ますが、女性疾病特約で給付される50,000円ならば手持ちの資産で賄おうという考えも一つです。
先ほどの先進医療も手持ちの資産で賄うという判断をするならば、確かに先進医療特約は安価で加入は出来ますが「不要」という選択肢もありです。
保険に加入するときは費用対効果や準備済みの”資産”の状況が重要なポイントになります。今一度現在の資産と将来の資産を踏まえて整理してみてはいかがでしょうか?
私が保険業界に入った新人の頃の思い出
思い起こせば当時の私は、雨の日も雪の日もとは大げさですが、一週間のうち半分くらいを”飛び込み営業”の時間に充てていました。そして、その時に使っていた常套句が「先進医療特約ついていますか?」でした。「先進医療特約」が各保険会社で出始めた頃でしたので、付加していない人がとても多かったです。
おそらく保険会社は今後も新商品や特約を開発して商品化してくると思います。その中には先進医療特約のように費用対効果のある特約もあれば、他のもので代替できる特約も出てくると思います。ますます取捨選択が求められる事でしょう。
数十年後の未来は「薬の処方箋特約ついてますか?」「自宅療養特約ついてますか?」が飛び込み営業の定番という時代になっているかもしれません。
もしかすると医療保険という概念すら無くなっているかもしれませんし、あるいは保険に変わる仕組みが出来ているかもしれません。
きっと本当に必要なことは病気をしないように食生活や生活習慣の見直しをして健康を維持すること、計画的に資産形成を成就させて●●特約に振り回されない人生を迎えられることです。
まずは私も、「最近、妻が購入したエアロバイクで健康を維持するぞ!」という決意表明をしたいと思います。
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